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加美で暮らす人

 

CASE.1

「加美町の酒を世界へ」女性蔵人の挑戦

Yukie Chiba / Kami Town, Miyagi.

Beautiful People

宮城県・加美町の豊かな水と酒米を使い、すっきりときれいで飲み飽きない味わいの日本酒「山和」や「わしが國(くに)」で知られる「山和酒造店」の蔵人(くらびと)を務める千葉友紀江さん。
「海外にも通じる日本酒を造りたい」と語る。
加美町に生まれ、加美町から世界を見つめる千葉さんに酒造りと加美町への思いを聞いた。

「加美町で働きたい」と
酒造りに

千葉さんは地元の高校を卒業後、「加美町で働きたい」と父もよく飲んでいた「わしが國」の蔵元である「山和酒造店」に就職した。最初は日本酒の分析を担当し、その後蒸した米に麹(こうじ)、水を加えて酵母を培養して酒の元となる「酒母」造りを手がけ、先輩の杜氏に付いて酒造りを学んだ。数年の修業の後、南部杜氏協会の認定資格を取得した。選考では醸造学などの試験と面接があるが、千葉さんは面接で「日本酒が海外で注目される中、国内はもちろん、輸出しても酒質を保って、海外でも通じる酒を造りたい」と夢を語ったという。
そして2年前、蔵人として酒造りの責任を担うようになった。最初の造りでは、「先輩杜氏の造りを思い浮かべて、それに付いていって、余裕ができてきたら少しずつ自分の考えを取り入れていく。本当に必死でした」と振り返る。純米大吟醸などの造りが佳境に入る1月から2月にかけては、泊まり込みで夜も2時間おきにチェックしていたという。そうしてできた酒を最初にしぼりにかけて、味わったときは「えもいわれぬ味わいでした」と振り返る。そして強く思ったのは「酒造りは絶対に一人ではできない。仲間同士で協力してなせること」という感謝の気持ちだった。

酒どころとしての加美町を

千葉さんが語る「山和酒造店」の酒は「すっきりとキレイ、飲み飽きない」味だ。早くから酒米の不純物の除去や地下水のろ過などをする機械を取り入れ、ワインのような食中酒としても楽しめる酒造りに取り組んできた。千葉さんはそこに女性蔵人ならではの感覚を生かしたいという。もろみの味や成分をしっかり確認するなど綿密な管理と、酒母を手でかき回すときの手触りで酒の状態を図る。「伝統を守りながら取り入れていきたい」と笑顔を見せる。
機械に詳しい蔵人と試行錯誤しながら独自の酒米洗浄機を開発するなど、「現状に満足することなく、酒造りを突き詰めていきたい」と意欲を燃やす。今季は少量のタンクでの造りに取り組み、より世界を意識した酒造りに挑戦したいという。台湾出張で日本酒の評価が高いことを実感したといい、「日本よりもより華やかな味わいの吟醸酒が好まれていた。まず国内の鑑評会での評価を確実にしながら、キレイですっきりした味わいに華やかな香りを加えるような工夫をしていきたい」と話す。山和酒造店を含め、数件の酒蔵が軒を並べる加美町を「酒どころとしての加美町をアピールして、サミットの場で加美町の酒が選ばれるようになれば」と夢を語る。

豊かな自然と優しい
気持ち醸す

そんな千葉さんは忙しい酒造りの気分転換に町をジョギングするという。「田んぼや山に囲まれて、本当にゆったりできる。走っていて知り合いでなくてもあいさつをしてくれる。みんな優しい気持ちで生きている」と語る。この豊かな自然の恵である米と水、人々の気持ちの通い合いが、千葉さんの酒造りを支えている。ゆったりとした自然と優しい人々の気持ち、加美の町は千葉さんの造る酒のようにすっきりとした“味わい”を醸し出しているようだ。

千葉 友紀江さん

ちば・ゆきえ/宮城県加美町生まれ。株式会社 山和酒造店勤務。蔵人(くらびと)。